【要約】「会議が噛み合わない」の正体はこれだ――新井紀子『シン読解力』が示す“読む力”の衝撃

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読解力は“学力”だけの話じゃない

あなたは、毎日の業務でこんな場面に心当たりはありませんか?

  • 「資料を読んだはずなのに、部下の認識がズレている」
  • 「マニュアル通りにやっているはずなのに、なぜか成果が出ない」
  • 「会議で話が噛み合わない」

これらの問題の背景には、意外にも“読解力”の不足が潜んでいるかもしれません。

学力と人生を左右する“教科書を読む力”とは

新井紀子氏の新著『シン読解力: 学力と人生を決めるもうひとつの読み方』(東洋経済新報社、2025年)は、従来の「国語の読解力」とは一線を画した、まったく新しい読解力の定義を提示しています。

その力とは、「シン読解力」――教科書や業務マニュアル、規約、仕様書といった、“説明のために書かれた文章”を、その文脈だけで正しく読み解く力です。

つまり、感情や経験に頼らず、書かれていることを文字通り、正確に理解する能力。

この読解力こそが、学力の基盤であり、そしてビジネスの現場でも最も求められているリテラシーだと、新井氏は訴えています。

中高生の7割が教科書を読めていない?

本書のベースには、著者が主導して実施してきた「リーディングスキルテスト(RST)」という大規模調査があります。中高生から社会人まで、累計50万人以上が受検したこのテストの結果、驚くべき事実が明らかになりました。

それは、「中高生の約7割が、教科書の文章を正しく読めていない」ということ。そしてこの傾向は、大学生や社会人になっても続いているというのです。

私たちは、日常的に文章を「読んでいる」と思っています。

しかし、実際には“正しく読めていない”ことが多く、誤読や思い込みがビジネスの現場で数々の齟齬を生んでいる可能性があるのです。

ChatGPT時代の“人間の強み”としての読解力

新井氏は、AI研究の第一人者としても知られています。かつて「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトを指揮し、AIが入試問題をどこまで解けるかを検証した彼女は、その過程で「人間の側にも読解力の危機がある」ことに気づきました。

近年はChatGPTをはじめとする生成AIが注目されていますが、新井氏はこう警鐘を鳴らします。

「生成AIに仕事を任せる前に、人間の側が文章を正しく読めていないと、間違いに気づけない」

まさに今、私たち人間がAI時代に価値を発揮するには、「読む力」こそが不可欠なのです。

この本が刺さるのは、こんな人

『シン読解力』は、教育関係者や保護者だけの本ではありません。むしろ以下のような課題を抱えるビジネスパーソンにこそ読んでほしい一冊です。

  • 会議での「話が噛み合わない」ことにモヤモヤしている
  • メールや資料の読み違いによるトラブルを減らしたい
  • 若手社員に「なんで分かってくれないんだろう」と感じている
  • 生成AIを業務に活用したいが、どこか不安を感じている

こうした日常の“ズレ”の正体が、「読解力」にあると気づけば、自分の言葉、相手の言葉、マニュアルや資料の意味が違って見えてくるはずです。

トレーニングすれば、読解力は伸びる

著者は、「読解力は先天的な才能ではない。後天的な“技能”であり、誰でも伸ばせる」と断言しています。

書にはRSTの問題例や、シン読解力を鍛えるための実践的なアプローチも掲載されていますが、その全貌はぜひ本書で確認してみてください。

“読んでいるつもり”から脱却する第一歩として、本書はとても心強い一冊になるはずです。

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